不動産投資の売却でかかる税金は?計算方法・節税対策・売るべきタイミングまで徹底解説

「不動産を売ったら、いくら手元に残るの?」「損しない売却タイミングはある?」

不動産投資用に購入した物件を売却する際は、税金や売却にかかる費用が気になっているはずです。

「利益が出ると思っていたのに、いざ売ってみると税金で大きく引かれ、ほとんど残らなかった」そんな話を見て不安になっている方も多いでしょう

加えて、「いつ売れば税金が安くなるのか」「減価償却って結局得なのか損なのか」など、調べるほどに分かりづらくなっていませんか。実は不動産の売却は、税金を知らないまま進めると利益が残らない可能性があります。

だからこそ重要なのは、「売る前に税金を理解しておくこと」です。本記事では、不動産投資用物件を売却する際に発生する税金や費用について解説します。

売却を検討している方はぜひ参考にしてください。

不動産投資の売却でかかる税金・費用

売却時にかかる費用・税金は複数あり、それぞれ性格・計算方法・金額感が異なります。

売却時にかかる税金、及び費用項目は以下の通りです。

・譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別所得税)
・印紙税
・登録免許税(抵当権抹消)
・消費税(課税事業者の場合)
・仲介手数料
・司法書士費用

「売却益から税金を引けば手元に残る」という単純な話ではないため、まず全体像を把握しておきましょう。

譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別所得税)

売却で出た利益にかかる、最も大きな税金です。

不動産売却にかかる税率は保有期間によって大きく変わり、「5年以内か5年以上か」で手残りが大きく変わります。

ここでは、売却によって1,000万円の利益が出たケースをもとに、税額をシミュレーションします。

同じ1,000万円の利益でも、税額は約200万円近く変わります。

実際の税額は取得費・減価償却・諸経費によって変動しますが、 「保有期間で税率が大きく変わる」という点は必ず押さえておきましょう。

印紙税

売買契約書に貼る収入印紙の費用です。

参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
参考:不動産売買契約書の印紙税の軽減措置|国税庁


印紙税は売却価格に応じて金額が決まります。たとえば1,000万円超〜5,000万円以下で2万円、5,000万円超〜1億円以下で6万円が目安です(令和9年までの軽減税率適用時)。

金額自体は大きくありませんが、見落としやすい費用です。

契約書を複数作る場合は、それぞれに印紙が必要になる点にも注意してください。

登録免許税(抵当権抹消)

住宅ローンや投資ローンが残っている物件には、金融機関が「抵当権」を設定しています

これは、万が一返済できなくなった場合に、金融機関がその不動産を担保として回収できる権利のことです。

物件を売却する際は、この抵当権を外す(抹消する)必要があります

その手続きにかかる税金が登録免許税で、不動産1件につき1,000円程度です。

また、実務では司法書士に依頼するケースが多く、別途数万円の報酬がかかることが一般的です。

なお、ローンを完済していて抵当権が設定されていない場合は、この費用は発生しません。

消費税(課税事業者の場合)

個人が不動産を売却する場合、基本的に消費税はかかりません。土地は非課税で、建物も個人売却であれば課税対象外です。

ただし、法人や一定の売上規模を超えた個人(前々年の課税売上が1,000万円超)が「事業として」売却する場合は、建物部分に消費税がかかります

以前は「個人ならかからない」と軽く考えられていましたが、インボイス登録がある現在では売却価格(建物分)に対して消費税の納税義務が生じます。 

また、1回の売却価格(建物分)が5,000万円を超えた場合、2年後の家賃収入等に対して簡易課税が使えなくなる影響も出るため、出口戦略における消費税シミュレーションは必須です。

仲介手数料

不動産会社を介して売却が成立した際に支払う成功報酬です。

売却価格が400万円を超える場合、宅建業法による上限は「売却価格 × 3% + 6万円(税抜)」と定められています

たとえば5,000万円の物件なら、手数料の上限は156万円ですが、これに消費税が加算されるため、実際の支払額は171.6万円(税込)です。

その他、物件価格に対してもう少し細かく仲介手数料の上限が決められていますが、物件を売却する際には仲介手数料がかかることも頭に入れておきましょう。

仲介手数料は、税務上の「譲渡費用」として認められるため、売却益から差し引いて最終的に支払う譲渡所得税を抑える効果もあります。

司法書士費用

登記手続きを司法書士に依頼する場合にかかる費用です。主に、抵当権の抹消や所有権移転などの手続きを代行してもらいます。

費用は数万円〜10万円程度が一般的で、物件や依頼先によって変わります。

なお、これも売却に必要な費用として扱えるため、譲渡所得の計算上は経費として控除可能です。後に申告に使うため、領収書は必ず保管しておきましょう。

不動産投資の売却税金の計算方法

物件を売却した際にかかる税金の計算方法について解説します。

譲渡所得を計算する

譲渡所得の計算式は次の通りです。

譲渡所得 = 譲渡収入金額 − 取得費 − 譲渡費用

譲渡収入金額は売却代金のことです。譲渡費用は仲介手数料・印紙税・測量費など、売却のために要した費用です。

ポイントは取得費の計算方法にあります。

取得費の考え方

取得費は、購入時にかかった費用の合計です。

・物件価格
・登録免許税
・不動産取得税
・仲介手数料
・司法書士費用 など

ただし、そのまま使うわけではありません。減価償却で計上した分は差し引かれます。

つまり、保有中に節税した分は、売却時に利益として上乗せされます。

なお、購入時の資料がない場合は、「売却価格の5%を取得費とする方法(概算取得費)」も使えます。

ただし、実際の取得費がそれより高い場合は、実額で計算した方が有利です。

減価償却費の控除方法

建物部分は毎年減価償却費として経費計上されますが、その累計額が取得費から差し引かれます。

計算式:実際の取得費 − 減価償却費の累計 = 売却時の取得費

たとえば建物取得費2,000万円の物件で、保有10年間に合計400万円の減価償却を計上していた場合、売却時の取得費は1,600万円になります。同じ3,000万円で売れても、減価償却の累計が多いほど帳簿上の利益が大きくなり、税負担が増えます。

税率をかけて税額を計算する

課税譲渡所得に対して、保有期間に応じた税率を乗じます。

※保有期間は売却した年の1月1日時点を基準に判断します。購入日から5年経過していても、1月1日時点で5年以下と判定されるケースに注意が必要です。

不動産投資物件の売却後の税金シミュレーション


税金の計算は、具体的な数字で見ることで理解が深まります。

保有期間・減価償却の状況によって税負担がどう変わるか、ケース別にシミュレーションします。

なお、物件ごとの条件(構造・取得費の内訳・減価償却の累計)によって実際の数字は大きく変わるため、あくまで参考資料として確認してください

短期譲渡で売却した場合

購入後5年以下での売却は、税率が約39.63%と高くなります。

※令和9年までの軽減税率適用時

物件価格がよほど値上がりしない限りは5年以内の売却はおすすめできません。

長期譲渡で売却した場合

5年超保有後の売却は税率が約20.315%に下がり、手残り額が大きく改善します。

※令和9年までの軽減税率適用時

同じ売却益でも長期譲渡なら約126万円となり、約119万円もの差が生まれます。

5年以内に売却を急がなければならない事情がない限り、税率が半減するまで保有を続けることが原則です。

減価償却を考慮したシミュレーション

減価償却費の累計が税額に与える影響を確認します。

同じ物件でも減価償却の累計額が多いほど取得費が下がり、課税譲渡所得が増えます。

ケースBは減価償却で保有中に多くの節税ができた一方、売却時の税負担が約81万円増えています。

「節税した分が売却時に利益が乗る」という構造がよくわかります。

不動産投資の減価償却については以下の記事を参考にしてください。

参考:不動産投資の節税には減価償却が有効!メリットや注意点をプロが解説

デッドクロス後に売却した場合

デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態のことです。この状態になると、帳簿上は黒字(減価償却費が減るため所得が増える)なのに、キャッシュフローは実質的に苦しいという現象が発生します。

減価償却費は建物の耐用年数に従って年々減少する一方で、ローンの元金返済額は変わらないため、ある時点でこの逆転が起きます。

デッドクロス後は毎年の税負担が増加しながら手元資金が減り続ける状態が長引く前に売却を検討することが、損失を最小化する出口戦略の基本です。

参考:不動産投資の出口戦略とは?初心者が知るべき3つの選択肢と成功・失敗事例

不動産投資物件の売却で使える4つの節税対策

不動産投資物件の売却で使える4つの節税対策は以下の通りです。

・5年以上保有して長期譲渡にする
・事業用資産の買換え特例
・取得費加算の特例(相続)
・法人化による税率最適化

5年以上保有して長期譲渡にする

最もシンプルで確実な節税策です。売却する年の1月1日時点で保有期間が5年を超えると、税率が約39.63%から約20.315%へ大幅に下がります。

売却する際には、「売却する年の1月1日時点で5年を超えているか」を基準に考えましょう。

丸5年が経過した直後の年末に売るのではなく、翌年を待ってから売却するだけで税率が半分近くになります。

カレンダー上の所有期間が5年を超えていても、売却の「年」を間違えると短期譲渡扱いになるため、細心の注意が必要です。

事業用資産の買換え特例

投資用不動産を売却して別の事業用不動産に買い換える場合、一定の条件を満たすと売却益の一部を繰り延べできる特例があります。すべての税金が免除されるわけではなく「先送り」になるイメージですが、買い換えのタイミングに合わせて税負担を平準化できるメリットがあります。

適用要件(売却物件・購入物件の種類・保有期間・面積等)が細かく設定されているため、事前に税理士への確認が不可欠です。

取得費加算の特例(相続)

相続で取得した不動産を売却する場合、相続時に支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。これにより課税譲渡所得を圧縮できます。

相続から3年10ヶ月以内の売却が条件となるため、相続した物件の売却を検討している場合は期限を意識することが重要です。

法人化による税率最適化

法人で不動産を保有・売却する場合、個人と異なる税制が適用されます。法人税率(中小企業の場合、所得800万円以下は約15%)が、長期譲渡の20.315%より低い場合があります。また法人では損益通算の制約が少なく、他の費用との相殺も柔軟です。

ただし法人化にはコスト・手続きの手間が伴い、すべての人に有利なわけではありません。保有規模・税率・出口戦略を総合的に考慮したうえで判断してください。

なぜ売却時の節税が重要なのか?「手残りキャッシュ」の最大化

ここまで具体的な節税対策を解説してきましたが、大切なのは「税金を減らすこと自体」が目的になってはならないということです。

不動産投資の真の目的は、納税後の手元資金をいかに多く残し、次の投資や資産形成に繋げるかにあります。

不動産売却では数千万〜数億円という大きな金額が動くため、所得税・住民税だけでなく、物件の保有状況によっては「消費税」の負担も手残りに直結します。

税率が数%違うだけで、手元に残る現金が数百万円単位で変わってしまうのが不動産投資の現実です。

「払うべき税金は適切に払いながらも、制度を賢く利用して支出を抑える」というコスト意識が、長期的な投資の成否を分けるといっても過言ではありません。

税金を含めたあらゆるコストをコントロールし、最大化したキャッシュを確保してこそ、納得のいく「出口戦略」が成功したと言えます。

不動産投資用の物件はいつ売るべき?売却タイミングの見極めポイント

いつ売るかは、税率と同じくらい手残り額に影響します。「いい値段がついたから売る」という感覚的な判断ではなく、以下の指標で総合的に判断しましょう。

金利が上昇局面にある時

金利が上がると、不動産購入者のローン返済負担が増し、不動産価格に下落圧力がかかります。2024年以降、日本でも金利の段階的な引き上げが現実になりつつあり、金利上昇局面では高値で売れる期間は限定的です。

金利がさらに上がる前に売却することで、高値での売却機会を確保できるかもしれません。一方で「まだ上がる」と待ち続けると、売却機会を逃すリスクがあります。

大規模な修繕が発生する前

築年数が上がるにつれ、外壁塗装・屋根修繕・設備交換・配管更新などの大規模修繕が発生します。修繕前の売却と修繕後の売却では、修繕費用分だけ手残り額が変わります。

修繕を実施しても売却価格が必ずしも上がるとは限らないため、大規模修繕が迫っているタイミングでの売却検討は有効な戦略です。

減価償却が終了する前

減価償却費は保有期間中の所得を圧縮し、税負担を軽減する効果があります。耐用年数が終了して減価償却が使えなくなると、同じ家賃収入に対する税負担が増えます。

特に築古の木造物件(法定耐用年数4年などの短期償却)を活用した投資では、償却期間終了前に売却して次の物件に移行するサイクルが節税戦略として有効です。

不動産投資物件の売却に関するよくある質問

ここからは不動産投資物件の売却に関するよくある質問を紹介します。

不動産投資の売却タイミングは5年超えがベスト?

税率の観点では、所有期間5年超の「長期譲渡所得」が有利です。

ただし「5年超えればベスト」とは限りません。

デッドクロスによる税負担増、修繕リスクの顕在化、出口戦略(売却益)を優先して短期譲渡を選択するケースもあります。

なのでトータルのROI(投資収益率)で判断することが大切です。

投資用物件を売却した場合の税金はいつ払う?

所得税(復興特別所得税含む)は、売却した翌年の確定申告期間(2月16日〜3月15日)に納税します。

一方、住民税は翌年6月以降に納付するため、時間差が生じる点に注意が必要です。

売却益(キャピタルゲイン)を手放しで使ってしまうと、翌年の納税資金が不足するリスクがあります

あらかじめ税理士への試算を依頼し、納税用資金を別口座で管理するのがプロの鉄則です。

不動産投資用の物件に入居者がいても売却できる?

「オーナーチェンジ」物件として、賃料収入を引き継ぐ形で売却可能です。

メリットは、空室物件に比べて買主(投資家)が融資を受けやすく、成約までがスムーズな点です。

デメリットは、「実需(マイホーム)」として検討する層がターゲットから外れるため、区分マンション等の場合は、空室で売却するよりも価格が抑えられる傾向があることです。

不動産投資物件を売却時に消費税は課税される?

土地は非課税ですが、建物は「売主が課税事業者かどうか」によって決まります。

2年前(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えている個人事業主や法人の場合、建物譲渡対価に対して消費税が課されます

一方、免税事業者である個人が売却する場合は、建物部分にも消費税はかかりません。

昨今のインボイス制度導入に伴い、自身が課税事業者になっているケースも増えているため、必ず売却前に消費税の有無を確認してください。

まとめ

不動産投資の売却では、税金の知識は「あれば得をする」ものではなく、知らないと確実に損をする重要な要素です。

売却益にかかる税率は、保有期間が5年以下か5年超かで約2倍変わるため、タイミング次第で手残りが数百万円単位で変わることもあります。

また、保有中に節税として活用してきた減価償却は、売却時に課税対象の利益を押し上げる形で影響します。

つまり、「節税できた分は売却時に回収される」仕組みになっており、この構造を理解していないと想定外の税負担につながります。

さらに、売却の判断はタイミングがすべてです。金利の動きや大規模修繕の時期、減価償却の進み具合などを踏まえ、市場環境と物件状況を総合的に見極める必要があります。

そのうえで、売却前には必ずシミュレーションを行い、税引き後にいくら手元に残るのかを確認してください。

感覚ではなく数字で判断することが、失敗しない出口戦略の基本です。可能であれば、不動産に強い税理士に早い段階から相談することをおすすめします。