不動産投資はなぜ節税になる?仕組みや節税できるケース、注意点を解説

「不動産投資は節税になる」という話を耳にしたことがある方は多いはずです。しかし「なぜ節税になるのか」を正確に説明できる人は、意外と少ないのではないでしょうか。

節税の仕組みを理解せずに物件を買うと、「思ったより税金が減らなかった」「売却時に多額の税金がかかった」という失敗に直結します。逆に仕組みを正しく理解すれば、同じ物件でも節税効果を最大化した戦略が取れるようになります。

結論を先に言えば、不動産投資の節税の核心は「減価償却で作った帳簿上の赤字を、給与などの黒字所得と相殺すること」です。

「現金は減っていないのに税金だけが減る」この仕組みを理解することが、節税戦略の第一歩です。

この記事では、現役不動産投資家・小原正徳氏の実践的な視点をもとに、節税の仕組み・具体的なシミュレーション・意外と落とせる経費・節税のリスクまで、初心者にもわかりやすく体系的に解説します。

結論|不動産投資で節税できるのは「損益通算」で赤字・黒字を相殺できるから


不動産投資で節税できる理由は、シンプルに言えば「帳簿上の赤字を使って、課税される所得を減らせるから」です。

この仕組みを理解するには、以下の2つのポイントを押さえる必要があります。

・不動産投資で所得税・住民税を節税できる仕組み
・現金は減っていないのに税金が減る仕組み

それでは詳しく解説します。

不動産投資で所得税・住民税を節税できる仕組み

不動産投資の節税は、以下の表の通り3ステップで成立します。

たとえば、給与所得が800万円で不動産所得がマイナス200万円の場合、課税対象は600万円まで下がります。

このように、実際には手元に現金があっても、会計上の「赤字」を作ることで合法的に税金をコントロールできるのが不動産投資の強みです。

支出はないのに税金だけが減る「減価償却」のカラクリ

節税の最大のポイントは、減価償却費が「実際にお金を支払わない経費」であることです。

通常、経費といえば「お札が財布から出ていくもの」ですが、減価償却費は異なります。たとえば年間100万円の減価償却費を計上する場合、その年に1円も支払っていなくても、帳簿上は100万円の「損失」として認められます。

この「支出を伴わない経費」によって課税所得が下がるため、「手元の現金は維持(または増加)しながら、支払う税金だけを減らす」ことが可能になります。これが、不動産投資が資産形成において「資金効率が極めて良い」と言われる本質的な理由です。

ただし、減価償却はあくまで「購入代金の前借り」であり、売却時にはその分だけ物件の帳簿価格が下がる(=売却益が出やすくなる)という「税金の先送り」の側面もあります。

不動産投資の節税ケース【具体例シミュレーション】

節税効果は年収によって大きく異なります。まずは以下の表をご確認ください。

「自分にはどれくらい効果があるか」をイメージするために、2つのケースで比較します。

【節税効果高い】年収900万円以上のケース

所得控除後の課税所得が900万円以上の方は所得税率が33%以上に達します。この税率が高いほど、課税所得を1円でも減らしたときの節税額が大きくなります。

【シミュレーション例】

  • 給与所得:1,000万円
  • 不動産所得:家賃収入120万円−経費(減価償却含む)220万円=−100万円
  • 損益通算後の課税所得:1,000万円−100万円=900万円
  • 節税効果の目安:所得税率33%+住民税10%=約43%相当 → 約43万円の節税

年収が高い方にとって、不動産投資の節税は大きなメリットになります。

【節税効果薄い】年収900万円未満のケース

年収が低いほど所得税率が低くなるため、課税所得を圧縮しても税額の減少は限定的になります。

【シミュレーション例】

  • 給与所得:500万円
  • 不動産所得:−100万円
  • 損益通算後の課税所得:400万円
  • 税率目安:所得税20%+住民税10%=30% → 節税額は約30万円

節税効果がゼロではありませんが、高所得者と比べると効果は小さくなります。

年収900万円以下の方が不動産投資を行う場合は、節税効果よりもキャッシュフロー(毎月の手残り収入)と資産形成を主目的に置く考え方が適切です。

とはいえ、ここまで不動産投資が節税になると伝えましたが、節税額は上記を見ても分かる通り、そこまで大きくありません。

あくまでも目的が「不動産投資」であれば節税のメリットも受けられるますが、節税のために不動産投資をするのは向いていないことを抑えておきましょう。

物件別|不動産投資で節税効果が出やすい物件・出にくい物件


どの物件を買うかによって、節税効果は大きく変わります。

節税効果が出やすい物件とそうでない物件は以下の通りです。


それでは詳しく解説します。

節税効果が出やすい物件

築古の木造物件は節税効果が高い代表例です。

木造の法定耐用年数は22年で、すでに耐用年数を超えた築古木造は4年という短い期間で全額償却できます。

短期間に大きな減価償却費を計上できるため、節税効果が集中します。

新築・築浅のRC造(鉄筋コンクリート)物件は法定耐用年数が47年と長く、建物価格が高いため、長期間にわたって安定した減価償却費を計上し続けられます

「毎年一定額の節税を続けたい」というニーズに合っています。

節税効果が出にくい物件

土地のみの購入は土地の減価償却ができないため、節税効果はほぼ期待できません。

そのほかにも、中古区分マンションは、一棟物件と比べてそもそも建物価格の絶対額が低く、減価償却できる金額自体が限られます。

さらに築浅・高額の物件は建物比率が低くなる傾向があり、減価償却額が少ないため、短期的な節税効果は特に限定的です。

一方、築古物件は償却期間が短く初期の年間償却額は大きくなりますが、償却が早期に終了するため長期的な節税効果は続きません。いずれにせよ、区分マンションは節税手段として効果が出にくい類型です。

また、表面利回りが高く実質的なキャッシュフローが黒字の物件は、不動産所得が黒字になるため損益通算が発生せず、節税効果は薄くなります。

不動産投資における節税投資の考え方

不動産投資の節税効果は、「保有中の所得税・住民税率」と「売却時の譲渡所得税率」の差によって生まれます

物件の売却時には、保有期間によって譲渡所得税率が大きく異なります。

・【短期譲渡】保有期間5年以下:譲渡所得税率は約39%(所得税30%+住民税9%)と高く、節税どころか大きな税負担になるリスクがある

・【長期譲渡】保有期間5年超:譲渡所得税率は約20%(所得税15%+住民税5%)まで下がり、課税所得が330万円超の方であれば、保有中の税率との差が生まれ、節税メリットがある

※保有期間5年の判定は、売却した年の1月1日時点で行う点に注意が必要です。

不動産投資における節税は、この税率差を活用した戦略です。

最低でも5年以上の長期保有を前提に計画を立てることが大切です。


【現役投資家が解説!】不動産投資で意外と落とせる経費まとめ


不動産投資では、知らないと損をする「意外と経費にできるもの」が存在します。正しく計上することで節税効果をさらに高めることができます。

なお本記事の内容は以下のYouTubeでも詳しく解説しています。


経費として計上できるもの一覧

不動産投資で経費に落とせる項目は以下の通りです。

条件付きで検討できるもの

条件はあるものの、経費として処理できる項目は以下の通りです。

原則として経費にならないもの

不動産投資を始めても経費として落とせない項目は以下の通りです。


過度な節税は法人の純資産を減らし、将来的な銀行融資の審査にマイナスの影響を与えます。

規模拡大を目指している方は、適正な納税とのバランスを意識してください。

経費計上の判断は税理士に相談することを強くおすすめします。

不動産投資で節税効果を高める方法


不動産投資の節税効果を最大限高める方法は以下の通りです。

  • 購入タイミングを調整する
  • 修繕費計上を活用する
  • 青色申告特別控除を活用する
  • 不動産税務に強い税理士を選ぶ

購入タイミングを調整する

減価償却費は購入した年から計上が始まります。

そのため、所得が高くなる年(昇進・ボーナス増・事業の好調期)に合わせて物件を購入すると、節税効果を最大化できます

ただし、減価償却費は月割なので、12月に購入するとその年は1ヶ月分しか減価償却費を計上できません。そのため、所得が高いうちに買うのは大切ですが、その年のなるべく早い時期に購入することをおすすめします。

逆に所得が低い年の購入は節税効果が薄くなるため、購入タイミングを所得水準と合わせて考えることが重要です。

修繕費計上を活用する

建物の維持管理に必要な修繕費は、原則としてその年の経費に一括計上できます。

ただし、注意が必要なのは「資本的支出」との区別です。

物の価値を高めるような大規模なリフォームや設備更新は、数年にわたって償却する資産(資本的支出)とみなされる場合があります

「20万円未満の軽微な修繕か」「原状回復のためのものか」など、処理方法を事前に税理士と確認することで、否認のリスクを抑えつつ経費化を進められます。

青色申告特別控除を活用する

不動産所得で青色申告を行うと、一定の要件を満たすことで最大65万円の特別控除を受けられます。

ただし、65万円(または55万円)の控除を受けるには「5棟10室」以上の事業的規模が必要であり、それ未満の規模の場合は10万円控除となります

規模に関わらず、事前の「青色申告承認申請書」の提出と複式簿記での記帳が必須ですが、現在はクラウド会計ソフトで初心者でも対応しやすくなっています。

不動産税務に強い税理士を選ぶ

不動産投資の節税額は、依頼する税理士の専門性に左右されます。

減価償却の最短期間での設定、修繕費と資本的支出の有利な判断、さらには将来の売却(出口戦略)を見据えた税金シミュレーションなど、不動産特有の高度な判断が求められるからです。

税理士は顧問料の安さだけで選ばず、「不動産投資家としての視点」を持った税理士を選ぶことが、結果として最大の節税につながります。

不動産投資で節税を目指す場合のリスク

不動産投資における節税にはメリットがある一方、知っておかなければ損をするリスクも存在します。

特に以下のポイントに注意してください。

・赤字が大きい場合は銀行融資に悪影響を及ぼす

・売却時の所得により逆に損をする場合もある

赤字が大きい場合は銀行融資に悪影響を及ぼす

節税のために不動産所得の赤字を大きくしすぎると、銀行が融資審査で「この人はキャッシュフローが赤字だ」と判断するリスクがあります

たとえばキャッシュフローが実際には黒字(現金が手元に残っている)にもかかわらず、減価償却費を含めた帳簿上の赤字が大きい場合、銀行の審査担当者によっては「赤字経営」として評価されることがあります

2棟目・3棟目と規模を拡大していきたい方にとって、銀行融資への悪影響は致命的です。

節税効果を最大化しながら、銀行から見た財務の健全性を損なわないバランスを税理士と相談しながら設計することが重要です。

不動産投資の銀行融資については以下の記事も参考にしてください。

参考:不動産投資は融資戦略が9割!成功する人がやっていること5つのこと

売却時の所得により逆に損をする場合もある

減価償却で節税できた金額が、売却時の税負担で逆転することがあります

物件を売却した際、売却価格から取得費や諸費用を引いた「譲渡所得」に対して譲渡所得税がかかります。

ここで注意が必要なのは、減価償却を計上した分だけ建物の帳簿価額が下がるという点です。帳簿価額が低くなるほど「取得費」が小さくなり、結果として譲渡所得(=課税対象)が大きくなります

さらに、購入から5年以内の売却(短期譲渡)は税率が約2倍になります。減価償却で数百万円の節税をしたとしても、それを上回る譲渡所得税を支払うことになれば、トータルで損をしてしまいます。

不動産投資の節税は購入時から売却時まで一連の計画として設計することが必要です。

不動産投資の節税に関するよくある質問

ここからは不動産投資の節税に関するよくある質問について解説します。

不動産投資の節税効果はどのくらい?

年収・物件の種類・減価償却額によって大きく変動します。

例えば、課税所得が1,000万円の方が、不動産投資で年間100万円の「帳簿上の赤字」を作った場合、所得税(33%)と住民税(10%)を合わせて年間約43万円程度の節税効果が見込めます。

正確な試算には、物件ごとの「建物比率」や「耐用年数」をもとにした専門的なシミュレーションが不可欠です。

不動産投資の減価償却はインボイス事業者にもメリットがある?

インボイス制度は主に「消費税」の仕組みであり、所得税や住民税を計算する際の「減価償却」とは別物です。

そのため、インボイス登録の有無に関わらず、減価償却による節税メリットはあります。

ただし、事務所や店舗として貸し出す物件でインボイス登録(課税事業者への転換)を選択した場合、毎年の消費税納税義務が発生します。

所得税の節税額と消費税の負担額のバランスについては、必ず事前に税理士へ相談しましょう。

不動産投資で節税をした人の失敗例はある?

よくある失敗の一つが、減価償却期間が終了した後に訪れる「デッドクロス」です。

償却期間が終わると経費が急減し、税負担が一気に重くなります。

その結果、帳簿上は黒字なのに税金の支払いで手元の現金がなくなる「黒字倒産」のような状態に陥るケースがあります。

節税期間だけでなく、償却終了後の納税額や売却(出口)まで見越した長期的なキャッシュフロー管理が不可欠です。

不動産投資の税金対策はサラリーマンにも効果がある?

サラリーマンは給与から税金が源泉徴収されているため、確定申告で不動産所得の赤字を合算(損益通算)することで、払いすぎた所得税の還付を受けられます。

ただし、年収が低いほど適用税率も低くなるため、節税効果は限定的になります。

年収500万円以下の方は、節税を主目的にするよりも、将来の資産形成や安定した家賃収入を得るための「事業」として取り組むのが現実的です。

まとめ

不動産投資の節税は、単なる「お得な制度」ではなく、「課税タイミングのコントロール」であることを正しく理解しましょう。

その核心は、減価償却で作った赤字を給与所得と相殺する「損益通算」にあります。しかし、減価償却はあくまで「税金の支払いを将来に先送りしている(繰り延べている)」側面が強く、出口(売却時)の税金まで計算に入れて初めて、本当の利益が確定します。

「とりあえず節税になるから」という安易な動機での購入は、将来の資金ショートを招くリスクがあります。正しい知識を武器に、収益性と出口戦略を両立させた投資戦略を立ててください。

株式会社不動産科学研究所